研究内容Research Contents

音響パルス反射法を用いた蓮根生息状況可視化技術の開発に向けた研究

研究目的

 宮城県北部に位置する伊豆沼・内沼では、ハスNelumbo nuciferaが大きな群落を形成し、水面上を覆うことから沈水植物の生息環境を悪化させ、富栄養化を促進させる要因の一つとして考えられている。そこで、このハス生息状況の持続的・定量的な計測手法が求められており、湖底下に広がる蓮根や底泥厚み分布を精度よく測定可能な新しい観測システムが必要である。しかしながら、植物が生息する底泥内の音波伝搬は極めて複雑であり、実用的なシステム開発は容易ではない。
本研究では、その複雑な音波伝搬現象を解明していくための基礎的検討として以下の取組を行ったので報告する。

I. 堆積層の柱状コアサンプリング

 内径50㎜、長さ1.5-2.0mのアクリル製柱状パイプを用いて船上からコアリングを実施した。目視と触感による官能的な評価により性状変化が見られた箇所を境界部とし、各層毎の試料の粒度分布や強熱減量測定などを実施した(帝人エコ・サイエンス株式会社)。Sample 3のみ、深度方向の堆積層変化が大きかったため、本報告ではSample 3に着目する。

Biot-Stollモデルを用いた音響パラメータの算出

 サンプリングにより得られた物理量を基に、Biot-Stollモデルを用いて100 kHz時の各層の縦波音速と減衰定数を算出した。尚、ガラスビーズ(GB)を使用した予備実験により、縦波音速の計算値と実測値を比較し、良く一致することを確認している。土粒子密度、全体密度及び、間隙率以外の物理パラメータは文献1・2を参照されたい。

時間領域差分法による音波伝搬シミュレーション

 算出した音響パラーメータに基づく2次元弾性FDTD (Finite Differential Time Domain)法を用いて堆積層内の音波伝搬解析を行った。尚、蓮根の縦波音速及び、密度は実験により測定した。

音響データとの比較検討

 解析結果とサンプリング地点周辺で取得した音響データを示す。各層からの反射が確認され、特に音響インピーダンス(音速と密度の積)の差が大きい層間からの反射が強いことが分かる。動揺や粒度分布、湖底形状の影響などにより、実測値は複雑な音波伝搬を示しているが、概ね解析結果と一致した。しかし、蓮根からの反射は弱く現状の計測手法では高確度な蓮根検出が困難であるため、計測手法の改善が必要であることが分かった。

まとめ

 今回サンプリングした試料から得られたパラメータを基にBiot-Stollモデルを用いて音響パラメータを算出した。またそのパラメータを基に、簡易モデルを設計し、弾性FDTD法により蓮根を含む堆積層内の音波伝搬解析を行い、堆積層の特徴を反映する解析結果を得た。
今後は、今回構築したモデルを用いて、計算値と実測値を照らし合わせながら実用的な計測システムの開発を進める。

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